事務局次長のコラム[第2回(2025/7/1)]
『ボランティアって奥が深いんです!〔中編〕』
第1回のコラムは、なんだか教科書のような内容になってしまいましたが、歴史の話にもう少しお付き合いください。
○戦後の復興・高度経済成長とボランティア
終戦後の復興期になると、戦災孤児の保護活動などが有志により展開されます。1947年には共同募金運動(いわゆる「赤い羽根」)の開始、1948年には赤十字奉仕団の誕生など、組織的な取り組みが広がりましたが、国もこうした動き(団体)を支援するため、法律で「社会福祉法人」を規定し、公的な助成を行うようになりました。
しかし、これは見方を変えると「社会福祉法人は国の支配に属する」とされることに他ならず、財政的な安定と引き換えに、社会福祉法人は国からの指導・監督を受けることになるという、皮肉な結果を招いたのです。それだけでなく、「社会福祉は国の責任」といった考え方が広まり、民間による社会福祉の取り組み(≒ボランティア活動)の広がりが阻害される要因にもなりました。
1960年代になると、高度経済成長の陰で所得格差の拡大や生活環境破壊などの問題が発生し、特に公害の改善を求める活動(“市民運動”と呼ばれることもあります)が各地で起こりました。こうした流れを受け、それまで個人や団体が単独で行っていた活動を横につなげようという動きが出てくるようになり、「大阪ボランティア協会」をはじめとした、ボランティア活動推進を目的とする機関もいくつか誕生しました。
こうして日本でも「ボランティア」という言葉は徐々に使われるようになりましたが、まだ一般市民の認識や関心は低かったようです。
○高齢社会の進展、そして「ボランティア元年」へ
1970年代には過疎・過密の進行、1980年代には高齢社会問題の顕在化といった社会情勢の変化が起こります。結果、市民が地域や社会、福祉の問題を“ジブンゴト”として捉えるようになってきました。特に、高齢者の介護や生活支援のボランティアが身近なものになってきたと言えるでしょう。
この頃、市区町村の社会福祉協議会に「ボランティアセンター(当初の名称は奉仕活動センター)」の設置が進められたり、国がボランティアの育成・振興策に積極的に取り組んだりといった動きも広がり、市民がボランティアに関する情報を得ることができる環境も整ってきました。1992年には、全国的な啓発イベントも開催されるなど、ボランティアが普遍化し始めます。
そんな中、後に「ボランティア元年」と呼ばれることになる1995年を迎えます。
(続く)
※参考文献:社会福祉法人大阪ボランティア協会=監修/巡 静一・早瀬 昇=編著(1997)
「基礎から学ぶ ボランティアの理論と実際」中央法規