『ボランティアって奥が深いんです!〔後編〕』

 すっかり間が空いてしまいましたが、事務局次長のコラムの第一弾(3回シリーズ)の後編をお届けします。たまたまこのページにたどりついた方はもちろん、過去2回の内容は覚えていないという方も多いと思いますので、どうぞ第1回〔前編〕から続けてご覧ください。

○“一般市民”が災害ボランティアに
 今から30年前の1995年。この年号にピンと来る方は多いかもしれませんが、この年の1月17日に、「阪神淡路大震災」が発生しました。第二次世界大戦後に発生した自然災害では、当時最悪となる6,434人もの犠牲者を出した未曽有の大災害でしたが、発災直後より全国各地から多くの人が被災地へと駆けつけ、さまざまな内容のボランティア活動を行い、復興の大きな力になりました。その数は、3か月で延べ100万人を超えるといわれており、現地には行かずに義援金や物資の提供などの“後方支援”に携わった人も含めると、もっと多くの方が自発的に行動を起こしたことは間違いないでしょう。
 また、特に医療や福祉、建築技術等の専門性を持たない“一般ボランティア”と呼ばれる方が多かったことも特徴です。テレビに映し出される凄惨な光景を見て、居ても立ってもいられずに現地に向かったという方もいると思いますが、当時は災害ボランティアの受け入れに関するノウハウが十分でなかったことや、ボランティア活動をする人にも心得(食料や交通手段は自分で確保することなど)が広まっていなかったことなどから、問題点も多く発生したともいわれています。ただ、それまでは「特別なこと」「一部の人だけが行うもの」というイメージが強かったボランティア活動に、社会人や学生など多様な方が参加したという事実は尊く、さらには行政の手が届かない“すき間”を埋める支援取り組み(心のケアなど)の重要性が認識されるなど、ボランティアの拡がりのきっかけになったことに異論を唱える人はいないと思います。

○社会の変化に伴い“深化する”ボランティア
 阪神・淡路大震災は、いわゆる「バブル崩壊」の数年後に発生しましたが、非正規雇用の増加とそれに伴う賃金格差の拡大など、社会構造が変化し始めた頃と一致します。人々に価値観の変化をもたらし、生き方を問い直す、そんな行動を起こす人が多く現れ始めた時期でもあると私は感じています。その後21世紀に入った頃からでしょうか、震災だけでなく集中豪雨などの気象災害も多発するようになりました。家庭の貧困が社会問題化したり、海洋ごみが増え続けたりといった、私たちの生活に直結する課題の顕在化しています。
 こうした身の回りの生活課題や、地球規模の社会課題に対しても、多くのボランティアが解決に向けて取り組んでいます。例えば子ども食堂の運営やビーチクリーン活動などは、そのほとんどが民間のボランティア団体やNPO法人(特定非営利活動法人)、あるいは個人によって行われています。地域に暮らす障害者や外国籍の方との共生といった分野の活動も、最近は活発です。オリンピックやパラリンピックなど、国際的なスポーツ大会でもボランティアが活躍しています。電車で体の不自由な方に席を譲ることや、荷物を運んであげるといったこともボランティア活動といってよいと思います。
 このように、ボランティア活動は社会の変化や時代の流れに伴い深化し、人々の暮らしになくてはならないものになっていると感じます。

○ボランティアの魅力って何だろう?
 偉そうなことを書いている私ですが、ボランティア活動に初めて参加したのは、30歳間近になってからの、商店街の夏祭りのお手伝いです。会社を退職し、これからどうやって生きていこうかを考えている(迷っている)ときだったのですが、「こんな世界もあるんだ…」という、驚きのような、喜びのような、何とも言えない気持ちになったことを覚えています。正直に言うと、自発的に参加したのではなく、「手伝ってくれない?」と頼まれて、よくわからないまま参加したのですが。
 その数年後、ひょんなことからボランティアやNPOなどの市民活動を支援する仕事に携わらせていただくことになり、気がつけば20数年が経ちました。支援の仕事だけでなく、自らもいくつかのボランティア団体やNPO法人の会員となり、ボランティア活動(営利を目的としない活動)を行ってきましたが、その難しさも感じています。自分なんか比べものにならないほど熱い想いをもって、真摯に、時には楽しそうにボランティア活動を長く続けている方を多く見てきましたが、尊敬しかありません。
 半月ほど前、約10年前に知り合って、一緒にボランティア活動などをしてきた約20歳年上の友(←私のことをこう呼ぶのです)が、突然この世からいなくなってしまいました。「千葉のスーパーボランティア」と呼びたくなるその友から、何年か前に「友よ。ボランティアの魅力って何だと思う?」と聞かれ、うーん…と考えて次のように答えました。
 「新たな人との出会いがあることと、未知の体験ができることですかね。」
 友はこの答えを気に入ってくれたようで、さも自身の言葉のように、特に若い人に伝えていた場面が思い出されます。
 ちょっと(かなり?)奥深くまで入り込み過ぎてしまったようですが、そもそもボランティア活動とは何かや、その分野・内容は法律で定義されていません。これからボランティア活動を初めてみようかなと思っている方は、ご自身に合った活動を、どうぞゆっくりと探してみてください。既にボランティア活動をしている・したことがあるという方は、まだやったことがない分野・内容の活動にも参加してみることをお勧めします。
 皆さんの感じている、または感じたボランティアの奥深さを、ぜひお聞きしてみたいなと思います。

(おわり)

※参考文献:社会福祉法人大阪ボランティア協会=監修/巡 静一・早瀬 昇=編著(1997)
「基礎から学ぶ ボランティアの理論と実際」中央法規